『かんもく』の子ども・保護者にとって入学・進級とは
4月は『かんもく』のこどもたちにとって環境の変化の大きい時期になります。
新しい先生になる、クラス替えによりクラスメートがかわる、社会的生活を送る中で「人」の環境の変化があります。
特に、幼稚園から小学校へ、小学校から中学校へ、といった「場所」「人」の両方の環境の変化がある場合、入学前から準備が必要になります。
『かんもく』の子どもが新しい環境で起こりやすいこと
■教師の理解不足による発話の強制など
・『かんもく』の対応方法がわからず、無理な要求をしてしまう。
・返事、自己紹介、教師からの質問などで答えられなくて固まってしまう。
・「返事をしなさい」「挨拶をしなさい」と注意をうけてしまい、クラスメイトの前で注目を浴びる。
■クラスメイトや部活動などでの発話の強制や誤解が生まれる。
・『かんもく』の子どもがなぜ話してくれないのか、疑問に思う子どもたちがでてくる。
・クラスメイトからの声掛け、誘い掛けなどで答えられなくて固まってしまう。
・「『あ』て言ってみて!」「話しができないの?」と、発話ができないことを責められてしまう。
・話しかけているのに誘っているのに「なぜ無視をするの!」と誤解を受けてしまう。
・話しかけた生徒も「話さない」と思うことで、「嫌われた」と誤解して傷ついてしまう。
■『かんもく』の子ども達の自信喪失、コンプレックスが生まれる。
・「話したい」のに「話せない」のは、本人にもわからない。
・本当はできることが、みんなの前ではできないことへの劣等感を感じてしまう。
・教師や他の生徒への疎外感、授業などへの恐怖感が生まれる。
・登校拒否が起きたり、対人関係による不安感から「うつ」の症状がでることもある。
『かんもく』の子どもの入学前の準備
■学校に『かんもく』のことを保護者がら直接伝える。
・まずは、『かんもく』のことを知ってもらい、理解をしてもらおう。
・『かんもく』の啓発資料などを読んでもらう。
■子どもの『かんもく』の程度や症状を具体的に伝える。
・学校生活の中でしてほしくないこと(発話の強制など)、できないこと(発表・音読など)、できること(首振り・うなづきなど)、心配していること(友達関係など)を具体的に伝える。
・学校(幼稚園)→学校(小学校)へ教育機関同士の引継ぎを依頼する。声掛けや対応の仕方を新しい学校に情報共有をする。
■学校に訪れる機会を増やして本人が場所に慣れておく。
・兄弟がいる場合は、授業参観や運動会の学校行事などで訪問することで校内やの雰囲気がわかる。
・学校の先生と顔を合わせて、「知っている人」を作っておく。
■職員会議などで学校内で『かんもく』の情報や、対応方法の共有を依頼する。
・子どもと関わりのある教師、または全職員に啓発資料に目を通してもらい対応方法を話し合いをしてもらう。
・授業中などの対応方法を共有してもらう。
・発表や歌唱テストなどの成績の評価の仕方、テストの実施方法など、発話や発表に代わる方法について話し合いをしてもらう。
■「仲のいい友達」「気にかけてくれている友達」「状況を知ってくれている生徒」などを学校に伝える。
・幼稚園、小学校からの友達の名前などを伝える。
・『かんもく』のこどもにとって、「仲のいい友達」「気にかけてくれている友達」「状況を知ってくれている生徒」などは大きな安心につながる。
・クラス編成などに関しては保護者の希望通りにはならないが、学校側は『かんもく』のこどもの対応にあたって貴重な情報となる。
・「仲のいい友達」「気にかけてくれている友達」「状況を知ってくれている生徒」にとって、「お世話させられている」と負担にならないよう注意をする。
入学後・進級後の『かんもく』の子どもについての理解
■周囲の生徒に『かんもく』の特性を伝えるべきかどうか
『かんもく』の子どもの特性を周囲の生徒に伝えるべきかどうかを検討してよい場合もある。
しかし、『かんもく』という診断名や特性だけが注目されてしまい、偏見を持つ生徒が出る場合もある。
生徒への伝え方や、説明の仕方に十分に注意をする。
『かんもく』という診断名を伝えなくても、状況を伝えて『かんもく』の子どもへの話しかけ方や、してほしくないことなど接し方を伝えるだけにとどめることも検討する。
保護者と先生がよく話し合い年齢や状況を判断しておく。
伝えることで起きる、メリット・デメリットを理解した上で慎重に行うようにする。
■クラスメイトや部活動などで日常的に関わりのある他の生徒へ、『かんもく』のことを先生から伝えてもらう機会を作る場合。
・本人へ『かんもく』の告知を行うかどうかを状況に応じて判断をする。
※本人へ『かんもく』の告知については、年齢や時期、本人の状況による。
・まずは、本人が他の生徒への『かんもく』の告知について望んでいるかどうかの意思確認を行う。
・本人・兄弟・姉妹へ『かんもく』の告知することを伝える。
・クラスメイトや部活動などで日常的に関わりのある他の生徒へ告知を行う場合は、本人への注目を避けるため本人のいないときに行ってもらう。
・学校生活の中でしてほしくないこと(発話の強制など)、できないこと(発表・音読など)、できること(首振り・うなづきなど)、心配していること(友達関係)を具体的に伝える。
※他の生徒への告知は、本人の状況などに応じて判断をする。
※本人が望まない場合は、無理に行わない。
『かんもく』の子どもの家庭と学校の良い関係を築くこと
■学校の様子を知る。
・『かんもく』の子どもに、困っていること、傷ついたことなどはないか確認をする。
・家庭での様子や、『かんもく』の子どもの気持ちなどを学校に伝える。
・「困ったこと」「傷ついたこと」など対応の仕方について、学校と話し合う。
・『かんもく』の子どもに学校と話し合った内容を伝えっる。
・「困ったこと」「傷ついたこと」を保護者や学校が対応してくれることで、安心して通学できる。
■相談機関を利用する。
・担任教師だけでなく、スクールカウンセラーなど専門知識のある専門員に相談をする。
・家庭子どもセンターなど市の機関に相談をする。
・「ことば」に関する市の行う支援教室に相談をする。
・『かんもく』の治療・相談のできる医療機関に相談をする。
・市の機関、専門員、医師などと、学校との連携を行ってもらう。
「話せなくても大丈夫だよ」が『かんもく』の子どもの新しい一歩に
学校が、全ての子ども達が安心して通うことができ、
教師と友達と『かんもく』の子どもが一生に一度の大切な時間を過ごせるように。
教師が、『かんもく』の正しい理解と対応を知ることで、楽しい学校生活ができます。
クラスメイトや他の生徒達に理解してもらえることで、友達になることができます。
『かんもく』の子ども達が、「今」、「学校」を楽しめる場所になってほしい。
「話せなくても大丈夫だよ」
それが『かんもく』の子どもの新しい一歩につながります。
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